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ブログ掲載版 「いま、ひとたびのみゆきまたなむ」


かけがえのない宝物は
憎悪の下に埋もれて幾星霜‥

Merry Christmas Novels
「いま、ひとたびのみゆきまたなむ」

しんしんと降り積もる雪が、
まもなく、軒の高さにまで達しようとしています。
村の古老たちは、その年一番の冬の訪れを、ナージャと呼びました。

ナージャは昔、ぼくたちの島を治めていた領主のお姫様でしょう?

彼らの住む湖の孤島は、過去、数百年に一度の大寒波に見舞われた折、
南下してきたヴァイキングの一団に蹂躙された。
領主一家も小舟で対岸を目指して波濤に身を任せたと伝えられるが、
その後の消息は誰もわからない。
村は毎年、ナージャのために深い雪に閉ざされる。
湖面が凍てる兆しを見せ始めると、老いも若きも、
冬篭りのために村中を走り回る。

ナージャが来る! 凍った湖を歩いて、ナージャが村に帰って来る!

彼女には 2 人の子供がいた。
長男は一家とともに荒れ狂う湖に漕ぎ出したというが、
生まれてまもない赤ん坊は、村の従卒が半ば強引に奪いとって、
島に留めてしまった。

ナージャ‥ かわいそう‥
うん‥ ナージャはとても怒ってるだろうね。

深雪に埋もれた丸木の家では、春までしのげるだけの食糧と、
白樺の薪に囲まれながら、子供たちが古老の昔語りに耳を傾ける。

仕方がなかった‥
赤ん坊には真冬の渡しに耐えられんかったじゃろう‥

ナージャは、自分の子供を取り戻すために、
毎年、孤島に帰って来るのかも知れないね‥
ねえ、ナージャの赤ん坊は、まだ生きてるの?

もう、300 年も昔の話じゃからなぁ‥

孫子の問いかけに、老爺は苦笑する

湖水のほとりに石塚があるじゃろう?
あそこに赤ん坊‥ おいくつまで生きられたのか知るすべもないが、
手厚く葬られていると、わしは親たちに教わったよ。

ナージャは猛烈な吹雪を身にまとい、
金切り声をあげながら、孤島の村を通り過ぎてゆく。
石塚も、かつて自分たちの暮らした村の家屋もすべて、
白い雪の下に埋め尽くしてしまう。

300 年か‥

窓枠の外に八分目ほど積もる根雪を眺めつつ、老爺は思う。
ここ数年ほど、年経るごとに降る雪が穏やかになった。

兄ちゃん!もう少し雪が解けたらさ、
湖に行って、石塚を掘り出しにいこうぜ!

老爺は思う。

来年、ナージャ姫が来られたときは、
お返しできればよいがのう。


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